犬とともに社会に貢献!人々を癒やす「セラピードッグ」のパワーでみんな笑顔に^^

犬とともに社会に貢献!人々を癒やす「セラピードッグ」のパワーでみんな笑顔に^^

セラピードッグという言葉を聞いたことがありますか?ふれあいや交流を通じて人々を笑顔にし、心と体のケアをするために訓練された犬のことです。福祉施設や小児病院、被災地などで活躍しているそう。まだまだ認知度が低いというセラピードッグの活動内容を、日本レスキュー協会のセラピードッグ事業責任者・赤木 亜規子さんにお話を伺いました。

はじまりは阪神淡路大震災

セラピードッグの育成・派遣を行っている日本レスキュー協会ができたのは、1995年9月1日。同年1月17日に起きた阪神淡路大震災がきっかけで設立されました。

阪神淡路大震災では、海外からたくさんの災害救助犬がやってきましたが、当時の日本には災害救助犬がまだ普及しておらず、うまく活動することができませんでした。

倒壊した家屋や土砂の下敷きになった人を捜し出すために特別な訓練を受けた災害救助犬が活躍できていれば、助かった命があったかもしれない。日本でも、災害救助犬を育成しよう!そうして、日本レスキュー協会は生まれました。

その後、震災遺児のためのクリスマス会に招待され、犬と触れ合うことで笑顔を取り戻した子どもたちを見て、セラピードッグの育成にも取り組むことになったそう。現在では災害時にペットも一緒に行動できるように、ペット防災の普及活動にも力を入れています。

瓦礫などが用意された災害救助犬の訓練場

どんな犬が向いているの?

赤木さんにどんな犬がセラピードッグに向いているのかたずねたところ、「穏やかな性格で、社交性がある」と教えてくれました。犬種問わず、大型犬から小型犬までいるとのこと。中には元保護犬もいるそうで、動物福祉にも一役を担っています。

日本レスキュー協会では7頭のセラピードッグが活躍しています(令和5年11月現在)

赤木さん「個々の性格を重視して、育成しています。生後8か月から適性テストを実施し、大きい音を怖がらない、知らない人に囲まれても萎縮せずにお腹を見せるなどの項目をクリアした犬がセラピードッグになれるんです」

ふれあいの前にはしっかりと説明をしています

どんな訓練・活動をしているの?

セラピードッグの活動場所は多岐にわたります。子どもや高齢者、障害者など、心や体に傷を抱えた人とふれあうことが多く、福祉施設や学校、被災地や小児病院を定期的に訪問しています。

赤木さん「1回の活動は約1時間。犬に触ってもらうのはもちろん、ボールを投げてもらって遊んだり大きな輪をくぐるパフォーマンスをしたりしています。日々のトレーニングもそれに合わせて行っています。

訪問時は、20〜30人の規模だとハンドラー(訓練士)2人とセラピードッグ2頭で伺います。大型犬と小型犬など、タイプの違う2頭を連れていくことが多いですね。

シャンプーは月に1度行い、訪問前にはドライシャンプーをしています。感染症の予防接種などもしっかりしていますので、衛生面も安心してセラピードッグとのふれあいを楽しんでほしいです」

日本レスキュー協会があるのは伊丹空港の近く。そのため飛行機の轟音が定期的に聞こえてきますが、犬たちは全く反応せず。飛行機の音もいい訓練になっているのだとか
お腹を見せて歓迎してくれたハッピーちゃん。その人懐こさにこちらの緊張もほぐれます

犬とハンドラー(訓練士)はかけがえのないパートナー

子どもの頃から犬が好きだったという赤木さん。昔から犬と関わる仕事をしていたのかと思いきや、この仕事に就く前はグラフィックデザイナーをされていたそうです。

赤木さん「日本レスキュー協会が広報紙を作るボランティアを募集していて。それに応募し、お手伝いするようになったのがきっかけです。当時は働きながら日本レスキュー協会のスクールにも通っていました。

そんな時に、今はセラピードッグとして活躍しているハッピーのパピーウォーカーを探していて、私が預かることになったんです。そのご縁から声をかけていただき、職員として働くことになりました。そのままハッピーの担当になり、気づけば7年。ハッピーには本当に感謝しています」

今では一番の人気犬だというハッピーちゃん。赤木さんをはじめたくさんのスタッフの愛情を受けて、立派なセラピードッグとして活躍しています。セラピードッグが日々の訓練をこなし、人々を癒すお仕事ができるのは、ハンドラーとの強い絆があるからこそ。犬と人間が対等な立場でパートナーとして活動しています。そんなハンドラーになるために必要なことをたずねると、意外な言葉が返ってきました。

赤木さん「犬が好きなことはもちろんですが、対人のコミュニケーションが好きな人が向いている仕事だと思います。訪問先では子どもから高齢者まで幅広い年齢層の方と接します。さまざまな人とのおしゃべりを楽しみ、犬の魅力を伝えられる方に、ぜひ目指してほしいです」

赤木さん(左)と城月(右)
ふれあいのふしぶしから赤木さんと犬たちの信頼関係が感じとられました

セラピードッグが人の心を動かした3つのエピソード

赤木さんに今までの活動で印象的だったふれあいを伺うと、3つのエピソードを教えてくれました。

小児病院で

赤木さん「小児病院には、外に出たことがない子や犬を初めて見る子もたくさんいます。そんな子どもが初めて犬と触れ合うと『中に誰が入っているの?』とたずねられることも。中に人が入っていると思ったみたいです」

老人ホームで

赤木さん「認知症のために感情を表現する事が少なくなった方がいたのですが、セラピードッグとふれあううちに、涙を流したんです!いつも無表情な方なので、みんなびっくり。後でわかったのですが、その方は昔犬を飼われていて、そのことを思い出したみたいでした」

被災地で

赤木さん「被災地の仮設住宅に住まわれている方がいて。その方は新しいコミュニティになじめずに引きこもりになってしまい、ボランティアの人が様子を見に行っても出てきてくれずに困っていたんです。しかし、セラピードッグが来ていることを伝えると、犬とふれあいたくて外に出てきてくれて。健康状態の確認もできて、ボランティアの方に感謝されました」

誰もが犬とのふれあいで笑顔になるーー。心を元気にするお手伝いをするセラピードッグの役割を体現するようなエピソードに、私たちの心も温まりました。

心と体のケアにセラピードッグという選択肢が当たり前になる未来を目指して

現在は障害のある子どもと接することが多いそうですが、要望があればどこにでも駆けつけたいと、赤木さんはおっしゃいます。

赤木さん「医療や教育の現場と一緒に活動していけたらいいなと思っています。なんでも、ペットを飼っている高齢者は医療費が少ないというデータがあるそうですよ。犬でなくても、猫でも植物でも、その人なりの癒しを見つけて元気の源になればいいですよね。

残念ながら、盲導犬や介助犬と違い、セラピードッグはまだまだ世間に知られていません。いつの日か心と体のケアにセラピードッグという選択肢が当たり前になる未来を目指して、日々活動に励んでいます」

セラピードッグはみんな、触られるのが大好きな人懐こい犬ばかり。日本レスキュー協会では、誰でも参加できる見学会(要予約・定員20名)を行っています。興味のある方はぜひ足を運んでみてくださいね。
※現在はお休み中。次回開催日は未定

日本レスキュー協会のサイトはこちら

【日本レスキュー協会公式サイト】

ちょっと寄り道

訓練所で飛行機を見たら、もっと近くで見てみたくなって、帰りに伊丹空港に寄り道しちゃいました。スケールの大きな飛行機の離陸シーンにテンションが上がりましたとさ☆

インタビュアー城月のひとこと

ハンドラーさんとわんちゃんの信頼関係が随所で感じられる取材でした。赤木さんがハンドラーになったエピソードがとっても素敵で感動!セラピードッグを通じて、社会に対する視野が広がってほしいなと感じました。もっとたくさんの人にセラピードッグの活動を知ってほしいです。日本レスキュー協会は企業や個人からの支援で成り立っているとのこと。私も募金をして、少しでも役立てたらうれしいです。


【この記事を書いた人】

尾西 美菜子

印刷会社の企画編集部門でライターとして働いたのち、医療業界へ転職。現在は歯科助手として働きながら、フリーライターとしても活動する。趣味は御朱印集め、サッカー観戦、読書。

X(旧twitter) @minako_writer

2023年12月15日公開/2023年12月12日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)