視覚障がい者に道を示してくれる大切なパートナー、知ってるようで知らない盲導犬のこと

視覚障がい者の歩行を安全に導く盲導犬。そんな盲導犬のこと、どのくらい知っていますか?
どんな風に育って、どんな風に訓練されているのかしら…
そんな盲導犬について知りたい!ということで、神戸市西区にある、兵庫盲導犬協会さんへ伺いました!

兵庫県神戸市西区。のどかに広がる田園風景の中に、兵庫盲導犬協会さんはあります。

もともとワンちゃんが大好き!盲導犬にも興味があり、先日訪れた見学会で知ったことを、ぜひ皆さんにも知ってほしい!と、あらためて取材に参りました。

−盲導犬協会って、全国にどのくらいあるんですか?

全国に11カ所あります。
北海道盲導犬協会、アイメイト協会(東京都)、日本補助犬協会(神奈川県)、いばらき盲導犬協会(茨城県)、東日本盲導犬協会(栃木県)、中部盲導犬協会(愛知県)、九州盲導犬協会(福岡県)、関西盲導犬協会(京都府)、日本ライトハウス盲導犬協会(大阪府)、兵庫盲導犬協会、そして日本盲導犬協会です。
日本盲導犬協会には神奈川、宮城、静岡、島根に訓練センターがあります。
神戸市に訓練センターがあることは、あまり知られていないなと感じます。啓蒙活動にも力は入れているんですけどね。

−そうですよね。ぜひ色々な人に知ってもらいたくて来ました!

ありがとうございます。

育ち方、財政面。知ってほしい盲導犬のこと

−雨の日はここで訓練を?

そうですね。施設中で訓練したり、屋根付きのドッグランで運動させたりします。ショッピングモールなどで屋内訓練をすることもあります。

晴れた日には施設内の模擬コースで訓練するそうです。

−なるほど。いろいろと大変なことも多いんじゃないかと思うんですけど、その辺りお聞きしても良いですか?

何といっても財政面です。うちの財源は寄付と募金で成り立っているので、どうしても赤字体質です。時々、遺贈というかたちで多額の寄付をくださる方がおられて、それで何とか。

−それはますます皆さんに知っていただきたいですね。

はい。盲導犬は国家公安委員会の管轄なんです。白杖と同じ、歩行補助具という扱いになるんですよ。

−そうなんですね!初めて知りました。

一方で、夏の暑い時期に外を歩かせているのはかわいそうなど、募金活動に連れ出すことに対してのご意見などをいただくことも多いです。私たちも万全の体制で臨んでいるので、都度丁寧にご説明して対応しています。

−ワンちゃんって喜怒哀楽が表情に出るから、ワンちゃん自身を見てほしいなと思いますね。

そうですね。盲導犬といっても、ユーザーさんと家に帰れば普通のワンちゃんと一緒です。飛び跳ねたりもするし、甘えたりもする。家の中では愛犬と同じなんです。たくさんのワンちゃんを見てきて実感しますが、やはり家庭の中にいることが幸せなんだと思います。
外に出られるのは楽しいみたいですよ。ワンちゃんはお散歩が大好きですから。

あと、賢いからこそ手を抜くことも知っています。ここまでは怒られへんやろなとか、わかっていますね。

−賢いなあ!家庭の中といえば、預かって育てるボランティアさんがいるんですよね?

パピーウォーカーさんですね。訓練を始めるまでの子犬の期間、愛情いっぱいに育ててもらうんです。人も同じだと思いますが、小さいときはとても大事なんです。情操教育というのかな、人との関わり方を覚えてもらう。かわいがるだけじゃだめで、きっちり人との過ごし方や人間社会で生活するマナーもしなきゃならないし、「犬と暮らしたい」という気持ちだけでは務まらないです。

−深い愛情を感じますね。1年に何頭くらいが盲導犬になるんですか?

平均すると3〜4頭ほどですが、生き物なので必ずしも予定通りというわけにはいきません。
いま盲導犬を待っていらっしゃるユーザーさんは5人くらいいらっしゃいます。申し訳ないとは思いますが、こればっかりは神の領域ですね。

盲導犬は兵庫県に33頭、全国で848頭が活躍しています。ガイドヘルパーサービスの充実や、ネットスーパーの普及などもあり、年々減少傾向にあります。

今年生まれたパピーちゃん。(公式Instagramより)

−経費の面ですが、だいたい1頭あたり500万円かかると伺っています。

過去にあった盲導犬に関する裁判の事例で、500万円という金額が出ました。ただ、実際に盲導犬になれるのは10匹のうち2〜3頭くらい。ですから10頭の育成費を仮に2頭で割ると、少なくとも700〜800万円くらいかかっている計算になります。

−盲導犬にとっての適性は?

健康なことはもちろんですが、大切なのは稟性。物怖じしない、落ち着いている、人が大好き、盲導犬のお仕事が好き、などですね。
いま育成中のパピーたちの親は、そういった適性のある子なので、3〜4頭の盲導犬が誕生して活躍してくれればなと期待しています。

−ずっと気になっていたのですが、なぜラブラドールが多いんですか?

実は日本に初めて入ってきた盲導犬はシェパードだったんですが、少しコワモテですよね(笑)。ラブラドールは見ての通り穏やかな顔をしていますし、性格も穏やか。あとはゴールデンレトリバーも適性があるといわれます。大きさもちょうどいいんです。

そろそろ訓練の様子を見ていただきましょうか。

−はい!お願いします♪

人にも犬にも個性がある。毎日が訓練です

基本訓練では3〜4分の短い訓練を1日に何度も行います。ワンちゃんの集中力に合わせるためです。あとは一般のワンちゃんがお散歩するのと同じように歩いたり、走ったりして過ごしています。前日に行ったことの半分でも覚えていれば良し。3歩進んで2歩下がる感じです。

「訓練について」

  1. 基本訓練
    1歳になったワンちゃんを、ハーネス無しで行う。まずはここに慣れようねという訓練。
    遊びながら行うことが多い。
    人の出した指示を聞いて犬が指示通りの動きをしたときに褒め、人との絆や信頼を築く訓練。
  2. 誘導訓練
    ハーネスをつけて人を安全に導くための訓練。
    障害物の回避や目的物の発見、左端をまっすぐ歩く、階段などの段差で止まってユーザーに教えるなど実際の生活を想定しての訓練。
  3. 共同訓練
    盲導犬を希望する視覚障がい者と、パートナーとなる予定の盲導犬が寝食をともにしながら行う訓練。
    食事、排泄、シャンプー、ブラッシングなどの世話や、市街地での訓練科目がある。
ハーネスをつけたとたんに訓練モードに!

−訓練をしていて「困ったな」と思うことはありますか?

その子その子で課題も違います。性格に合わせたアプローチの方法を探るのは大変だなと思います。毎日決まったところを行き来することが向いている子、いろんなところへ行くことを楽しめる子など性格もさまざまです。たとえばこの子はちょっと頑固なので、盲導犬として適性かどうかを見極めているところです。服従させるわけではありません。

上目遣いが可愛すぎる!

訓練士の方にも個性がありますし、毎回ちがうやり方だとワンちゃんが戸惑ってしまうので基本的に担当制です。ただ、徐々に別の訓練士に接する機会を作ることで、いろんな方法を吸収してくれるようになります。「訓練士だから動く子」ではなく、ユーザーさんの指示を聞いてくれる子に育てるためです。

難しいと感じるのは、ワンちゃんに私情を持たないようにすることです。信頼してもらうのは大切なのですが、依存してしまうのは防がないとと思います。

−わたしみたいに、ただワンちゃんがかわいい!好き!というだけでは務まりませんね。

だいたいどの訓練士も1頭目を送り出すときは泣いてしまいますね。教師と生徒という感覚に近いと思います。楽しいことは提供してあげるけど、情を入れすぎないようにしないと。

ハーネスをつけていないときは、甘えん坊。

−一般の方に、盲導犬と出会った時の心得などがあれば教えてください。

触らない、目を合わさない、口笛を吹かないなど、盲導犬の気を引くような行動は控えてもらいたいなと思います。最近では学校などでの講演活動を通して知ってくれる方も増えたと思います。

ここで一緒に生活しながら、訓練がんばっています!

最後に、施設内にある慰霊碑へ。

ここで訓練を受けた盲導犬やキャリアチェンジ犬、繁殖犬、PR犬たちがここに眠っています。

−このお仕事をしていて良かったと感じるのはどんなときですか?

うまくいかないこともたくさんありますが、自分の訓練した子が颯爽と歩いている姿を見るとうれしいです!

取材後記

「偶然なんですけど、今日はこの1月に生まれたパピーが1頭帰って来てるんですよ」という一言にテンションがだだ上がりになった取材陣。

「えー!会うことはできますか?」
「もちろんですよ!」

そしてインタビュー中。

「失礼します。パピーです!」

好奇心が旺盛すぎて、うまく写真が撮れません笑

「キャー!!!!!!!!!」

まるで推しのアイドルにでも会ったかのようでした(笑)。

パピーウォーカーさんのところですくすく育って、立派な盲導犬になってね♪

もっと兵庫盲導犬協会のことが知りたい!という方は、公式HPやInstagramにもたくさん情報が載っていますので、ぜひご覧ください!

兵庫盲導犬協会HP
https://www.moudouken.org/

公式Instagram
https://www.instagram.com/hyogo.moudouken2212/

インタビュアー城月のひとこと

盲導犬と一言でいいますが、それはとても大きな役割をもっています。
障がいをもった方たちの体の一部として一緒に人生を歩んでいきます。
それを支えている訓練士さんたちや職員さんの想いは私たちが想像できないくらい大きなことだと感じました。
とにかく一生懸命に訓練に励んでいるワンちゃんがかわいい!!
この取材を通して改めて犬の力、そして訓練士さん達の日々の努力を肌で感じることが
できてとてもよかったです。
これからも色んな形で応援できたらなと思っています。
盲導犬に遭遇したらそっと見守ってあげてくださいね。


【この記事を書いた人】

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宝水幸代

2014年フリーランスのライターとしてデビュー。現在、医療やビジネス系インタビューを中心に、音楽から美容まであらゆる分野に興味を持ち書き分けるマルチジャンル・ライターとして活動中。また各種イベントやコミュニティFM、動画配信番組などのMC、レポーター、モデルとしても活動しており、SNSでは自前の衣装とセルフメイクでさまざまなに変身する「クローゼット・コスプレイヤー」としての発信も。

2023年5月9日公開(ひょうご介護アナウンス編集部)