【理学療法士が解説】介護職で働く人のための腰痛予防と足疲れに対するからだケア

介護の仕事をしている人は腰痛があって当たり前!?

日本で働いている人のうち、からだの不調の訴えで最も多いのが腰痛です。また、腰痛を訴える人の多くが介護業界で働いている人だといわれており、介護の業務上で起こる病気の80%は腰痛であるというデータもあります。しかも、超高齢化社会が進んでいるいまの日本の現状で、介護業界の腰痛はますます増加していくことが考えられます。

みなさんも介護の仕事をされている中で、腰痛をお持ちではないでしょうか?腰痛があると仕事に支障が出ますし、放っておくと慢性腰痛となってどんどん治りにくくなっていってしまいます。

そこで当記事では、理学療法士が腰痛を予防するためのからだのケアについて解説していきます。介護に腰痛はつきものと考えられていますが、しっかりケアをしていけば腰痛は解消できます。ご紹介するケア方法はどれも簡単で、すぐに実践できるものばかりです。ぜひご覧ください。

腰痛の原因

腰痛の85~90%は原因不明の非特異的腰痛といわれています。残りの10~15%が腰椎椎間板ヘルニアや腰椎すべり症、坐骨神経痛など原因が明らかになっている特異的腰痛です。つまり、腰痛のほとんどは原因がわからないということになります。したがって、整形外科を受診しても診断名がつかなかったり治らなかったりする場合も多いのです。腰痛は、無理な抱え上げ・中腰での作業・ひねり動作など、腰に強いストレスがかかると発症します。例えば、介護現場では以下のような作業が当てはまります。

  • 重度介助をひとりで行う
  • 低いベッドでのオムツ交換やシーツ交換作業
  • からだをひねっての食事介助
  • 立ったまま腰を深く曲げての靴着脱介助

腰を支えている腰椎という骨は5つあるのですが、大きな可動域を持っていません。したがって、深く曲げたりひねったりしてしまうと腰は損傷されやすい構造になっているのです。腰に無理な姿勢や力が加わらないように、仕事場面でも意識して気をつけてみましょう。

からだをケアして腰痛を予防しよう

ここでは、腰痛に効果的なセルフケアをご紹介していきます。仕事場でできるものと自宅でできるものがあるので、すぐに実践できますよ。

腰痛があるとつい安静にしてしまいがちなのですが、過度な安静は腰痛を悪化させるということが最新の研究ではわかっています。「痛みが悪化しない程度で適度に運動する」ということが大前提になってくるので、覚えておいてください。

■腰反らし

腰反らしは、仕事場でのスキマ時間に手軽に取り入れられるセルフケアです。介護場面では腰が曲がった状態が長く続くので、細目に時間をとって腰を反らす習慣をつくっていきましょう。

  1. 立ったままの状態で骨盤に両手を当てる。
  2. 両手で骨盤を前に押し、腰を反らす。
  3. 2の状態で20~30秒キープする。

■マッケンジー体操

マッケンジー体操とは、自宅でできるセルフケアです。お風呂上がりに行ってみましょう。マッケンジー体操には腰痛を改善したり予防したりする効果があります。とくに椎間板ヘルニアに効果を発揮すると考えられています。

  1. うつ伏せになる。
  2. 両肘をついて背中をやや反らす。1分程度キープする。
  3. 両手をついて背中を反らす。1分程度キープする。
  4. できる人は3の状態から頭や首も反らして視線を天井に持っていく。1分程度キープする。

マッケンジー体操で痛みが増強する人はやめておきましょう。適度に腰が反って痛気持ちいいくらいがベストです。

■腹横筋を鍛える

出典:You Tube(CALISLIFE自重トレ 腹横筋トレーニング(ドローイン)のやり方【ポッコリお腹・腰痛予防】 )

最後に、腹横筋を鍛えましょう。腹横筋とは、お腹周りをグルっと一周巻くように付いている筋肉で、いわばコルセットのような役割をしています。腹横筋を鍛えると腹圧で体幹が安定し、腰への負担を少なくしてくれます。

  1. 息を吐きながらおへその下辺りを凹まして固めるようにお腹に力を入れる。
  2. 10秒10セットを目安に行いましょう。

介護中に力を入れなければならないときも、この腹横筋をイメージして力みながら作業してみましょう。腹横筋をイメージすることで、腰への負担がかなり軽減されるはずです。

腰痛は予防できる!

腰痛の原因や腰痛予防のためのセルフケアをお伝えしました。介護の仕事だからといって必ず腰痛になるわけではありません。しっかりセルフケアをして、腰痛で悩まないようにしましょう。今回ご紹介した腰反らし・マッケンジー体操・腹横筋強化は簡単で手軽にできる方法です。ぜひ試してみてください。

介護は立ち仕事だから足が疲れやすい

腰痛予防についてまとめてきましたが、「足が重だるい」「足に疲れがたまりやすい」「筋肉痛で足が痛い」このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?足に疲れがたまると仕事に支障が出ますし、とても困りますよね。

介護の仕事と一口にいっても、その内容は多岐にわたります。介護の仕事は、患者さんや利用者様の車イス移乗・寝返り介助・オムツ交換・シーツ交換・食事介助・着替え介助・トイレ介助・洗濯掃除などさまざまです。そして、その仕事のほとんどが立ち仕事になります。そこで次に、足の疲れの原因や足の疲れをとるためのからだケアをご紹介していきます。腰痛予防のからだケアと合わせて行ってみてください。

足が疲れる原因

そもそも足が疲れる原因は何なのでしょうか?足が疲れる原因は、主に老廃物質の蓄積や筋肉の微細損傷にあります。人間の筋肉の60~70%は下半身にあるといわれています。

これらの多くの筋肉を使って私たちは日々生活しているわけです。筋肉を動かすにはエネルギーが必要となるわけですが、このエネルギーを作り出す過程で乳酸という老廃物質も産生されます。少しの乳酸ならまたエネルギーに再利用されるのですが、あまりにもたくさん乳酸がたまってしまうと足の疲れの原因になり、重だるさなどを引き起こしてしまうのです。

また、足の疲れには筋肉の微細損傷も影響しています。仕事などで足を酷使すると、少なからず足の筋肉が損傷を受けます。すると、痛み物質であるプロスタグランジンなどが生成され、痛みや重だるさなどを引き起こすのです。介護の仕事は立ち仕事ですから、下半身の筋肉を長時間使い続けることになります。そのため、老廃物質が蓄積しやすかったり筋肉痛になりやすかったりするわけです。

足の疲れをとるからだケア

ここでは、足の疲れをとるセルフケアをご紹介していきます。介護の仕事のあいまや自宅でのスキマ時間にぜひ行ってみてください。

■アキレス腱伸ばし

まずはアキレス腱伸ばしです。アキレス腱伸ばしは、アキレス腱だけでなく、ふくらはぎにある下腿三頭筋という筋肉もストレッチされるので足の疲れには有効です。下腿三頭筋は「第2の心臓」と呼ばれているほど重要な部位になります。下腿三頭筋をストレッチして血流を改善させてあげると、足にたまった老廃物質を除去できます。

  1. 画像のような姿勢をとってアキレス腱を伸ばします。
  2. 反動をつけずに30~60秒伸ばしましょう。
  3. 膝を完全に伸ばしておくことがポイントです。
  4. 片方が終わったら、もう一方のアキレス腱も伸ばしていきましょう。

■足クロスストレッチ

足クロスストレッチは、太もも裏にあるハムストリングスという筋肉を伸ばしていくストレッチになります。このハムストリングスも疲れやすい部位なので、しっかり伸ばしてあげましょう。

  1. 立ったままで足をクロスさせます。
  2. 両手で両足のつま先をタッチします。
  3. 膝は完全に伸ばしておくことがポイントです。
  4. 画像のような姿勢で30~60秒キープしましょう。

■ゴキブリ体操

ゴキブリ体操はあお向けに寝転がって足を上げて行う体操です。足を心臓よりも高い位置に置くことで、重力を使って血の巡りや老廃物質の除去を促します。

  1. あお向けに寝転がり、画像のように足を上げる。
  2. まずは足全体を30秒ほどぶらぶら揺らす。
  3. 次に足首を30回曲げ伸ばしします。
  4. 最後に、足指を30回グーパ-グーパ―します。

足の疲れを解消しよう!

足が疲れる原因と足の疲れをとるセルフケアをご紹介してきました。アキレス腱伸ばし・足クロスストレッチ・ゴキブリ体操は、特別なアイテムがなくても簡単にできるセルフケアです。継続していけば足の疲れが解消されるはずですので、ぜひ試してみてください。


【この記事を書いた人】

濱南くにひろ

理学療法士。公立大学を卒業後、病院で理学療法士としてリハビリテーションに携わる。車イスバスケットボールチームのトレーナー経験もあり、医療・福祉・スポーツ分野に幅広く関わってきた。現在はフリーランスWebライターとして活動中。

2021年1月29日公開/2021年3月2日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)