保護犬・保護猫と一緒に暮らすことができる障がい者グループホーム「アニフルメゾン」。同じようなペット共生型の障がい者グループホームは全国に約1,500施設あると言われていますが、まだまだ社会の認知度は低いのが現状です。
3匹の保護犬を飼っているアニフルメゾンの代表取締役社長・構大典さん(写真右)と世話人・長岡美知枝さん(写真中央)に、障がい者グループホームで保護犬がもたらす効果を伺いました。
2021年に設立されたアニフルメゾン。元々は空き家を生かした障がい者グループホームを検討していました。
なぜ保護犬とともに暮らせる障がい者グループホームを作ろうと思ったのかを代表取締役社長の構さんにお聞きしました。
(構さん)
犬が好きで、日頃から犬や猫の殺処分問題をどうにかしたいと思っていたんです。日本は動物の殺処分が多いという話を聞いて、心を痛めていました。
一方で、障がい者の親が高齢化して面倒をみれなくなったり、病院にも長期入院ができなかったり、障がい者問題も浮き彫りになっている現代。
そんな時、障がい者が保護犬と一緒に住めるグループホームがあることを知りました。「二つの社会的ニーズを解決できるサービス」であることと、「障がい者の支援と保護犬は相性がいい」と感じて、保護犬とともに暮らせる障がい者グループホームの開設に取り組むことにしました。
アニフルメゾンで働いて2年の世話人の長岡さんは、「保護犬によって利用者さんとのコミュニケーションがよりよくなった」と教えてくれました。
(長岡さん)
最初の頃は利用者さんがなかなか話してくれなかったり感情を見せてくれなくて、うまくコミュニケーションをとることができませんでした。
でも犬がいることで、人と接することが苦手な人もまるで小さい子どもをあやすように愛情表現を示してくれて、徐々に打ち解けることができたんです。膝の上に乗ったり、おやつをねだったり、時にはそっと寄り添ったり、言葉以外のコミュニケーションは動物ならでは。そのぬくもりにスタッフも助けられています。
アニフルメゾンでは、4つのグループホームで3匹の保護犬を飼っています。ご飯をあげたり、お散歩に行ったり、日々のお世話を利用者さんとスタッフが一緒になって行っています。時にはお風呂に入れるようなおおがかりな作業をすることも。
3匹の保護犬は一般のペットと同じように飼われています。リビングなどの共用スペースを自由に行ったり来たり。みんな犬と過ごしたくて、自然とリビングに集まるそうです。
「利用者さん同士の共通の話題になって、自然と会話も増える。よい影響しかありません」と構さんは笑います。
アニフルメゾンEST清和台に住む利用者さんは「犬との生活がとっても楽しい。仕事から帰宅して、玄関で飛びついてきてくれる瞬間が一番幸せ」と教えてくれました。
編み物で帽子や服を作る利用者さんもいるんだとか。ここでは3匹の保護犬は、みんなのアイドルです。
アニフルメゾンが保護犬を積極的に取り入れている最大の理由は、散歩に行って外に出る機会が増えるから。
障がい者の方や女性のスタッフでも安全にお世話ができるように、お迎えする保護犬は小型犬にしています。
(長岡さん)
普段引きこもりがちな利用者さんも、散歩ならば積極的に外に出てきてくれます。近所の方とお話することで、よい気分転換になっているみたいです。
私よりも社交的にお話される方も多いんですよ。
保護犬の存在は、地域の方とのふれあいにも一役担っているんですね。
現在は兵庫県川西市に4つの障がい者グループホームを営むアニフルメゾン。
今後はもっと活動の幅を広げたいというお二人に今後の目標をたずねました。
(構さん)
今後はもっと外に出るような、地域の方とのふれあいを増やしていきたいですね。
2月に利用者さんが近所のハンドメイド&ワークショップイベントに編み物で出展したんですが、そのような機会が多くなったら素敵だなと思います。
また、保護犬をさらにお迎えして、救える命を一匹でも増やしたいです。
(長岡さん)
障がい者施設で暮らす動物にも、盲導犬や介助犬と同じように、社会的地位を築いてほしいなと願っています。特別な訓練を受けたわけではない普通の保護犬ですが、その癒やしの効果は身をもってひしひしと感じています。
殺処分される動物にもこのような活躍の場、社会的なお役目があることをたくさんの人に知ってもらいたいです。
保護犬や保護猫が介護の現場で輝ける可能性は、無限大ーー。
少しでも多くの命が、介護の現場で高齢者や障がい者と楽しく幸せに暮らす社会になればいいなと感じる取材となりました。
利用者さんが犬との生活を心から楽しんでいるのが伝わってきて、犬好きの私はとてもうれしくなりました。
スタッフも利用者さんも動物が好きな方ばかりだからか、とても温かくフレンドリーな雰囲気が印象的だったアニフルメゾンさん。
この記事で介護現場におけるアニマルセラピーについて広めるお手伝いができればうれしく思います。
【この記事を書いた人】
尾西 美菜子
印刷会社の企画編集部門でライターとして働いたのち、医療業界へ転職。現在は歯科助手として働きながら、フリーライターとしても活動する。趣味は御朱印集め、サッカー観戦、読書。
X(旧twitter) @minako_writer
2024年2月14日公開/2024年2月20日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)