介護現場でよく聞かれる「端座位(たんざい)」という言葉。
なんとなく「座っている姿勢」とわかっても、具体的な姿勢のイメージが湧かない人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、端座位を中心に介護でよく使う座位の種類について解説します。
新人の方が知識を覚えるため、また先輩職員が新人職員に座位について教えるために役立つ内容です。
端座位とは椅子やベッドの端に、足を降ろして座った姿勢となります。
漢字の通り、「端」の「位」置に「座」っている、と覚えるとわかりやすいですね。
続いて、端座位についてもう少し掘り下げていきます。
端座位の目的・メリット・デメリットを見てみましょう。
一般的に端座位は、ベッドから車椅子やポータブルトイレに移る前段階の姿勢です。
端座位は自力で取ることのできる姿勢なので、リハビリに用いられることもあります。
筋力回復や覚醒などの効果があります。
端座位のメリットは肺に空気を取り込みやすいことです。
ベッドで横になっている姿勢に比べ、背中が床面のマットレスから離れているため胸部が広がりやすく、空気を多く取り込めます。
空気を多く取り込むことは体全体の器官を活発にするため、ベッドで寝たきりの状態と比べ心身を活気ある状態にします。
また、身体の不自由な方が端座位を日常的に行うことで
など自分で姿勢を保てるようになり、できることの幅が拡がります。
端座位のデメリットとしては転落、怪我に繋がりやすいことがあります。
ベッドの端など背もたれ等がない場所に座っているため、不安定になりやすいからです。
たとえばこのような事故が実例として報告されています。
利用者さんを起こして車椅子への移乗のため、ベッドで端座位になってもらう
↓
職員が車椅子を取りにいくため利用者さんから離れる
↓
利用者さんがバランスを崩し前から転落、救急搬送
端座位を行う際は利用者さんの心身の状態をきちんと把握し、事故などに繋がらないよう注意しましょう。
端座位の他にも介護現場でよく使われる座位姿勢があります。
イラストを見ながら座位姿勢の種類を理解していきましょう。
長座位(ちょうざい)はベッドや床などにお尻をつき、足を伸ばした状態の姿勢です。
身体面では心臓や肺への血液循環が妨げられず、心臓や肺への負担が減少する姿勢となっています。
しかし膝を伸ばしたままの脚を下垂しないため、端座位よりも姿勢が不安定になります。そのため長座位の姿勢を長時間続けると疲れやすくなります。
半座位(はんざい)はベッドや車椅子のリクライニングを上げて、45度起こした状態の座った姿勢です。
肺が腹部の内蔵に圧迫されることが軽減されるため、呼吸が楽になり食事の逆流を防ぐ効果があります。
胃瘻や経鼻経管栄養で栄養をとっている方の介助では、逆流防止のため、まず半座位の体勢にしてから栄養剤を注入します。
起座位(きざい)は上半身を90度起こし、テーブルや机などにクッションを乗せ、それにもたれかかるような姿勢です。
ベッドで仰向けの状態より心臓を高い位置に保つことで肺活量の増加を図り、呼吸困難等を軽減します。
椅座位(いざい)は椅子や車椅子に腰をかけ、足の裏がしっかりと床に着いた状態です。
椅座位と端座位の違いは2つあります。
椅子の「椅」という文字の通り、しっかりと椅子に座っている姿勢を椅座位と覚えましょう
介護現場でよく使う姿勢をより詳しく学びたい方は、こちらの動画が分かりやすいです。
実際に、仰臥位(ぎょうがい・ベッドで横になっている状態)から端座位になる介助を行うときのポイントを順番に解説します。
力任せに起こすと利用者さんの負担になるだけではなく、介助者の腰痛の原因にもなるので注意が必要です。
介助方法については動画を見て学ぶことも有効です。
利用者さんの身体状況によっても方法は変わってきます。
より詳しく学びたい方は、こちらの動画も見ることでスキルアップを目指しましょう。
端座位とは椅子の端やベッドなど、高さのある座面に座り、足を下に降ろした姿勢を指します。
ベッドで寝ている状態に比べ、身体を活性化し生活の幅を広げる姿勢です。
ただの座位姿勢として認識するのではなく、メリットを理解し有効に活用するようにしましょう。
この記事が利用者さんへのより良いケアにつながれば幸いです。
2022年10月31日公開(ひょうご介護アナウンス編集部)