介護老人保健施設とは、介護保険法で定められた介護施設で、次のように定義されています。
介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。
介護老人保健施設, 厚生労働省
わかりやすくまとめると、要介護認定を受けた方の心身の支援をし、在宅生活を送れるように看護や医療を通じたケアとリハビリテーションを提供する施設であるというとです。
介護老人保健施設は定義に加えて、次のような基本方針を厚生労働省が定めています。
第一条の二 介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない。
介護老人保健施設, 厚生労働省
基本方針には定義で定められていることに加え、ご利用者が自立した生活を送ることができるように支援をする必要があると書かれています。
ここで言う自立とは、介護が必要となっても、利用者さんがもつ能力に応じた形で、自立した生活を送れるように介護などのサービスを利用できるということです。
介護老人保健施設は、利用者さんが在宅で生活を送れるよう支援することを目的としています。
施設では、
を提供するのです。
利用者さんが入居して生活されるわけではない点が、大きな特徴と言えます。
一方、特別養護老人ホームは、要介護度3以上の方が最期の時まで過ごせる施設です。役割の中心にはリハビリテーションや医療的なケアは置かれていません。
あくまでも日常生活を送る場所という特徴があります。
グループホームは、認知症を患っている利用さんが、できるかぎり自立した生活を送れるように支援を受けながら共同生活をする場所となっています
配置されている人員にも介護老人保健施設ならではの特徴があります。
リハビリテーションや医療的なケアの提供を行っていることから、リハビリテーションの専門職や医療関係職の配置が義務づけられています。
介護老人保健施設においてサービスを提供するために必要な人員(抜粋)
同じ入所系の施設である特別養護老人ホームでは、医師や理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士の配置は義務付けられていません。
また看護職員の配置も他の介護施設と比べて手厚くなっています。
介護老人保健施設では、1部屋にご利用者4人(もしくは2人)が生活するタイプが主流で、食堂や浴室も併設されています。ユニット型の個室タイプの施設もあります。
リハビリテーションを行う機能訓練室がある点も大きな特徴の1つです。機能訓練室では
などによってリハビリテーションが行われており必要な機器なども設置されています。
介護老人保健施設に入所されている方は、
65歳以上で要介護1以上の高齢者(もしくは40歳以上で介護保険法が定める特定疾病により介護認定されている方)
となっています。
提供しているサービスは大きく分けると、
の3つに分けることができます。
在宅生活への復帰を目的に、
などのリハビリテーションを行っています。
介護老人保健施設では、利用さんの病状などが落ち着いた維持期と呼ばれる状態でのリハビリテーションをしていることが多いです。(病院などで病気の後、間もない状態で行うのが急性期のリハビリテーションと言われています)
医師や看護職員が配置されていることから、他の介護施設と比較してみると医療的なケアが充実していると言えます。介護職員では行うことができない
など手厚く医療職が配置されているからこそ対応が可能な環境と設備が介護老人保健施設には整っています。
※看護職員は夜間に配置することが義務付けられていないので医療的なケアについては日中のみの提供としている施設もあります。
主に、
などの生活する上で必要となる介助を行っています。
他にも、
などの支援を必要に応じて個別に行います。
介護老人保健施設でのサービスは3ヵ月ごとに見直しが行われており、その際に在宅での生活にもどることが可能な状態であるのかを検討しています。自宅での生活が可能であると判断された場合には施設を退所する必要があります。
しかし、3ヵ月や6か月で必ず退所しないといけないわけではありません。介護老人保健施設の利用はおおむね3~6か月程度が目安と言われることが多いのです。しかし、必ず退所しなければいけないといったルールはありません。厚生労働省が発表している直近の(H25年)退所に関するデータを見ると利用の平均期間は311日となっています。
介護老人保健施設で働く職種はさまざまで職種ごとに業務の内容は異なります。リハビリテーションの専門職、看護職員、介護職員の1日の働き方は次のようになっています。
※1日で行うリハビリテーションの件数については施設やその時の状況により異なります。
※夜勤スタッフへの申し送りを含む
※業務の合間に、必要に応じて排泄ケアや入浴介助などを行います。
※施設によりますが看護職員は夜勤がある場合もあります。夜間も日中と同様にご利用者の健康管理をしながら介護職員と一緒に排せつなどの介助にあたります。
※夜勤の勤務時間は施設により異なります。
※必要に応じて排せつの介助や移動の介助など生活に必要な支援を随時行います。
※介護職員は夜勤がある場合がほとんどです。夜間も日中と同様にご利用者の状態に応じた生活の支援にあたります。
※夜勤の勤務時間は施設により異なりますが2交代、もしくは3交代の勤務となることがほとんどです。
一概に魅力と言っても何に惹かれるかは人それぞれ異なります。どのようなやりがいを求めているのか、めざしている働き方はどのようなものなのか、どういった職場の環境がよいのかまずは自身の考えを整理してみましょう。その参考になるように介護老人保健施設で働く際の魅力についていくつか紹介します。
介護を必要とする利用者さんであっても、出来るだけご自宅で過ごしたいと思っている方は多くいらっしゃいます。介護老人保健施設は、自宅へ帰る支援をすることから利用者さんやご家族から感謝の気持ちを受け取る機会が多いです。
状態が悪く自宅での生活が難しかった方が、よくなっていくのを目の前で見ることができるので、嬉しく感じられる機会が多くあり、やりがいを感じられます。
介護老人保健施設は、特別養護老人ホームやグループホームと比較して、利用者さんの入所期間が短く出入りが多くあります。
には魅力のある職場ではないでしょうか。
介護施設は、一般的には介護職員を中心とした人員構成なのです。しかし、介護老人保健施設では、いろいろな職種のスタッフが働いています。
それぞれが連携をしながら働いていることから、それぞれがもつ専門的な視点を学ぶ機会に恵まれています。
医師や多くの看護職員がいることから他の介護施設と比較すると医療的なケアが手厚いという魅力があります。介護職員だけでは対応が困難な利用者さんの急な変化であっても、対応できることもあり、気持ちの上で安心して働くことができる環境であると言えるでしょう。
介護老人保健施設は、在宅生活へ戻るためにリハビリテーションや医療的なケアを行っている特徴があることから、生活に重きをおいた他の介護施設とは異なる面があります。
そのことを踏まえ介護老人保健施設で働く上で気をつけたい点があります。
介護老人保健施設では、一般的な介護施設と同様に利用者さんの尊厳を守り自立を促した支援が行われていますが、役割上リハビリテーションや医療に重きを置いているケースがあります。
他の特別養護老人ホームなどの介護施設からきた職員にとっては求められる役割が異なることから最初は戸惑ってしまうかもしれません。
仮に他の介護施設と比べてレクリエーションが少ないと感じたとしても、必ずしもそれが悪いというわけではないことを理解しておきましょう。
介護老人保健施設に求められている在宅へ戻るための支援をするという役割を意識して働くことが大切になります。
介護老人保健施設の役割や特徴を踏まえた上で、向いていると言える方の特徴を紹介します。
在宅へ戻ることを目標にした利用者さんへの支援は困難なケースも多くあり、時に力強く、時には繊細で優しくご利用者に寄り添うことが求められます。
これらの支援を行うことができ、なおかつそういった支援にやりがいを感じられる方に向いていると言えるでしょう。
介護老人保健施設には医師をはじめ、リハビリテーションの専門職や看護職、介護職と多様な職種が働いています。
自身のスキルやキャリアを高めるために多職種の働き方を知りたい方には向いている職場と言えます。
介護老人保健施設は利用者さんの出入り多い場所です。
その分だけ自身の気持ちや働き方を切り替えながら働くことになりますが、そういった働き方が好きな方やたくさんのご利用者と関りをもつことが苦にならない方、楽しめる方に向いている職場と言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
介護老人保健施設について働く側の視点に立ち求められている役割や特徴、魅力などについて紹介をしてきました。
「在宅へ帰るための支援を受ける場所」という役割があることを覚えておけば、介護老人保健施設の特徴や魅力などについて理解しやすいと思います。
本記事が、
の参考になれば嬉しく思います。
2020年11月27日公開/2020年12月6日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)