理学療法士は、英語でPhysical Therapistと言い、日本でもRTと略されます。
理学療法士及び作業療法士法第2条において、理学療法士が医師の指示のもと行う理学療法は「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること」と定義されています。
理学療法士は病気やけがによって体力・運動能力が低下した方だけでなく、高齢の方など運動機能の低下の予防や健康維持にも活躍の場が広がっています。
「立ち上がる」「起き上がる」「歩く」「寝返る」など基本動作の回復や維持・予防を目的としたリハビリテーションプランを立て、筋力トレーニングなどの実際の訓練を提供しているのです。
また運動を通じた訓練だけでなく電気や温熱治療といった物理療法も用いて、患者が望んだ日常生活を送れるようサポートしていきます。
理学療法士になるには「理学療法士及び作業療法士法」に基づいた国家資格が必要です。養成校で3年以上学ぶか、すでに作業療法士の資格を持っている場合は養成校で2年以上学ぶことで受験資格が得られます。
主な就職先は大学病院や、総合病院などの医療機関、地域包括支援センターなどの保健機関、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、老人保健施設などの介護福祉施設など理学療法士の就職先は医療機関が6割です。
日本が超高齢化社会を迎える今、運動機能低下の予防や認知機能低下を抑えるための運動やリハビリテーションを行うなど介護福祉施設でのニーズが上昇中です。
また他にも教育機関やスポーツ分野において選手の疲労やけがの早期回復、身体づくりに携わる仕事に就いている方も増えています。
理学療法士の仕事は患者の「基本的動作能力の回復」を目的としており、そのために行う業務としては大きく2つあります。
理学療法には運動療法と物理療法があります。運動療法では運動を通じて体を動かしていくことで、関節の可動域を広げるほか、筋肉の強化・改善を図ります。
たとえば高齢の方であれば、平行棒や歩行器を使った歩行訓練、ベッドから起き上がる訓練、階段の上り下りをする訓練などです。日常生活を送るうえで必要となる動作が無理なく行えるようリハビリをしていきます。
また物理療法は物理、つまり外部から刺激を与え、運動機能が低下した部分の回復・痛みの軽減を目指し、その方法は温熱治療や電気治療、赤外線治療などさまざまです。
理学療法士の大切な仕事として、リハビリテーション以外にデスクワークがあります。デスクワーク業務の大半がカルテの作成です。
患者ひとりひとり症状・環境・希望が異なりますので、医師の指示のもと、まず患者ひとりひとりのリハビリテーションプランを作成します。
リハビリテーションプランに基づき、「どのくらいの進歩が見られたか?」「その後の治療にどのような改善が必要となるのか?」など患者の状態を事細かに記録していくことも理学療法士の重要な役割となります。
カルテは患者が転院や退院するとき、「どの程度の運動機能があるのか」「今後どうしていけば良いのか」の大切な指標となりますので、記録を残しておくことが必要とされています。
厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、理学療法士の平均年収は、約410万円です。
給与に関しての調査データでは、同じリハビリテーションのプロである作業療法士とまとめて記載されていることが多いです。
施設・事業所の規模や地域、雇用形態、経験年数によっても給料は大きく変わります。
目先の給与に惑わされず、資格手当などの各種手当や待遇をよく見て仕事探しをしましょうね。
理学療法士は超高齢化社会を迎える日本において、介護福祉の分野でニーズが増えているとともにスポーツの分野においても活躍が期待されています。さまざまな場面で活躍できる可能性を持っていることは理学療法士として働く楽しみのひとつです。理学療法士にはほかにもたくさんのやりがいを感じるポイントがあります。
なんと言っても一番のやりがいは患者さんに回復が見られたときです。リハビリテーションプランの作成から一番の目標である「患者の基本的動作能力の回復」が達成できたときは、喜びも大きく今後の励みとなります。結果が出ると分かって患者に続けてもらうリハビリですが、人によっては長い期間を要することも少なくありません。地道な過程が結果に結びつくのですから、患者さんはとても嬉しく、そして理学療法士にとっても大きなやりがいにつながります。回復したときの嬉しそうな患者の笑顔は、理学療法士への最高のプレゼントと言えるかもしれませんね。
リハビリは決して楽なものではありません。本来できていた動作ができなくなり、けがや病気でうまく動かなくなったところを回復させるため、患者は痛みに耐えながらリハビリを行います。運動能力が思い通りに回復しないとリハビリにやる気を見せないことも少なくありません。
しかし目標を1つずつ達成することで「元気になりたい」「回復したい」と患者が強く願いリハビリに積極的に取り組むように変わってきたとき、理学療法士も何とも言えない嬉しさを感じるものです。すぐに結果が出ない仕事だからこそ、患者とともに一生懸命に取り組んだ達成感がやりがいにつながるのかもしれませんね。
2020年6月26日公開/2020年7月7日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)