国家資格である「栄養士」「管理栄養士」が活躍できる就職先は、病院、学校、給食会社などさまざまです。
そのなかで、介護業界においても栄養士や管理栄養士が強く求められていることをご存知でしょうか。
高齢化社会のなかで介護施設の需要はますます拡大しており、より良いサービスを提供するために食事内容にこだわる介護施設も増えてきています。
今回は、そんな介護業界で働く栄養士・管理栄養士の仕事内容について詳しくご紹介します。
栄養士・管理栄養士は、世のなかの人々に対して、食事や栄養についてのアドバイス(栄養指導)や食事の管理(献立作成や栄養素の計算)を行う仕事です。
栄養士は「都道府県知事の免許」を受けた国家資格、管理栄養士は「厚生労働大臣の免許」を受けた国家資格です。
そして今回取り上げる介護現場においても、栄養士・管理栄養士は利用者さんの健康管理を担う重要な役割を担っています。
それぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう。
介護現場で働く栄養士の仕事内容は、施設の利用者さんの献立作成や食材の発注、調理などがメインです。
利用者さんの身体状況をチェックしながらメニューを考え、ソフト食やミキサー食など高齢者の方でも食べやすい形で提供します。
また、季節に合わせた行事食を取り入れるなど、利用者さんに「食の楽しみ」を感じてもらうことも大切な仕事です。
管理栄養士の場合は、上記の栄養士の仕事に加えて「栄養ケア・マネジメント」も行います。
栄養ケア・マネジメントとは、個々人の栄養状態を正確に把握し、評価・改善するための一連の流れのことです。
具体的には利用者さん一人ひとりに適した栄養ケア計画を作成し、その計画で問題ないか経過も細かく記録していきます。
実際に食事中の様子も観察し、そこで問題が見つかれば、計画の見直しや個別の対応なども検討しなければなりません。
介護業界の栄養士・管理栄養士の求人をみると、初任給は「17万円〜22万円程度」としている求人が多いです。
また、厚生労働省の「介護従事者処遇状況等調査」によると、介護に携わる栄養士・管理栄養士の平均給与月額は以下のとおりです。
<栄養士・管理栄養士の平均給与月額(2018年度)>
基本給 | 206,770円 |
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手当 | 45,120円 |
一時金 | 57,400円 |
合計 | 309,280円 |
資格手当については、多くの施設で栄養士よりも管理栄養士のほうが1万円前後高く設定されています。
それ以外の各種手当によっても毎月数千円〜数万円の差が出るため、求人内容をよく確認しておくようにしましょう。
栄養士・管理栄養士が介護現場で働く魅力を3つご紹介します。
魅力の一つめが、介護現場では栄養士と利用者さんとの距離が近いことから、食を通して「利用者さんの健康を支えている」実感を感じやすい点です。
利用者さんにとって最適な食事内容を考えるためには、栄養士も実際に介護の現場に出て、利用者さんの生の声を聞くことが必要です。
そのなかで「この前の〇〇は食べづらかった」「もう少し〇〇してほしい」といった要望を受けることもあるでしょう。
そうした利用者さんの声を聞きながら献立の内容を考え直したり、食事の提供方法を工夫したりするなかで、「おいしかった」と笑顔をもらえたときには大きなやりがいを感じられます。
さまざまなチャレンジができる点も、介護現場で働く魅力のひとつです。
栄養士は利用者さんがどんな食事なら喜んでくれるのかを考え、季節に合わせた行事食を出したり、食を楽しむためのイベントを催したりすることもあります。
利用者さんのなかには味覚が衰えている方も少なくありません。
そんな方でもおいしく食事を食べてもらえるように、栄養士は食材を変えてみたり調理方法を変えてみたりと日々奮闘しているのです。
「この施設に栄養士は自分ひとりだけ」という状況も多いでしょう。責任も大きいですが、その分自分の意思でさまざまなチャレンジができる環境といえます。
魅力の三つめが、就職先・転職先を探しやすい点です。
日本は少子高齢化の問題を抱えており、介護施設は今後も増え続けていくことが予想されています。
さらに、介護施設の種類や入所定員数によっては「栄養士の配置が必須」とされている場合もあります。
このような状況から介護業界における栄養士のニーズは高く、転職や再就職はしやすい状況といえるでしょう。
栄養士・管理栄養士が介護現場で働くうえで、必要とされるスキルや心構えについて見ていきましょう。
介護施設で働くうえで、栄養士は「栄養士としての仕事のみ」を行うわけではありません。
献立作成や発注、衛生管理などの栄養士としての仕事に加えて、調理師の手が足りなければ厨房に入って調理を行う場合もあります。
また、栄養士と介護職を兼任するケースもあります。介護の現場に出て、高齢者の方と直に接することで気づくことも多いからです。
そのため、「栄養士の仕事しかしたくない」と考える人には向いていないでしょう。
栄養士以外の業務にも積極的にかかわり、必要とされることを自ら見極めていく意識が求められています。
介護に関わるさまざまなスタッフと協力していく、円滑なコミュニケーション能力も必須です。
施設の種類によっても異なりますが、介護現場には介護スタッフだけでなく、介護支援専門員(ケアマネジャー)、生活相談員、看護師、事務員など、それぞれの専門領域を持った人たちが活躍しています。
そうした介護に関わる多くのスタッフと協力・連携し、利用者さんの食の嗜好や問題点などをお互いに共有しながら、一人ひとりに最適な食事内容を考えていく必要があります。
栄養士が周囲の人と密にコミュニケーションを取ることが、利用者さんへのより良い食事提供につながっているのです。
ひとくちに「介護施設」と言っても、その種類は多岐にわたります。
栄養士・管理栄養士が活躍できる主な職場としては、以下のような施設が挙げられるでしょう。
それぞれの施設によって、利用者さんの傾向や抱える問題点には違いがあります。
栄養士として、その施設が抱える課題に柔軟に対応していくことが大切です。
今回は、介護現場で働く栄養士の仕事内容や魅力についてご紹介しました。
介護の人材は業界全体的に不足しています。栄養士以外の業務を兼任する可能性もあり、「栄養士としての仕事だけをやりたい」といった人には向いていないかもしれません。
しかし、その分幅広い業務に関われるチャンスがあり、大きく成長できる環境だといえるでしょう。 今回の内容を参考に、ご自身の希望に合う業界かどうかを考えてみてください。
2020年10月19日公開/2020年10月27日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)