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【語呂合わせ・動画付き】バイスティックの7原則をわかりやすく解説

「バイスティックの7原則」とは、介護士や保育士、看護師など対人援助に関わる人の行動規範とされている原則です。

アメリカの社会福祉学者であるフェリックス・バイスティック(1912-1994)が50年以上も前に提唱し、今でも対人援助の基本となっています。

福祉や医療、教育などに携わる方々はもちろん、仕事や家庭、恋愛での人間関係に悩んでいる方々も「バイスティックの7原則」を学ぶことでヒントが見つかるかもしれません。

また、介護福祉士や社会福祉士の試験にも出題されやすいので、受験生の方のために覚え方の語呂合わせもご紹介しています。

「バイスティックの7原則」を
動画・語呂合わせ付きで解説

画像:Unsplash

バイスティックの7原則を簡単にまとめると次のようになります。

バイステックの7原則説明
①個別化の原則問題は一人ひとり違うものなので、似たような問題と一緒に考えない、という考え方
②意図的な感情表現の原則怒りや悲しみ、妬みなどクライアントの自由な感情表現を認める、という考え方
③統制された感情表現の原則援助者は感情的にならず冷静に判断する、という考え方
④受容の原則クライアントの考えを否定しない、という考え方
⑤非審判的態度の原則クライアントの考えに善悪の判断をしない、という考え方
⑥自己決定の原則行動を決定するのはあくまでもクライアント自身である、という考え方
⑦秘密保持の原則クライアントの情報を他方に漏らしてはいけない、という考え方

※相談する側の人をクライアント、相談される側の人を援助者と呼びます。

介護福祉士や社会福祉士など、福祉系の資格試験で出題されやすいこともあり、覚え方に苦労される人も多いです。そんな方のために語呂合わせの覚え方もご紹介しますね。

「バイスティックの7原則」覚え方(語呂合わせ)

覚え方の語呂合わせは、「恋(こい)と慈悲慈悲(じひじひ)」です。

語呂合わせバイステックの7原則
①個別化の原則
②意図的な感情表現の原則
③統制された感情表現の原則
④受容の原則
⑤非審判的態度の原則
⑥自己決定の原則
⑦秘密保持の原則

この語呂合わせは「さくら福祉カレッジアキラ」さんのYoutube動画で紹介されていました。

次は「バイスティックの7原則」を一つひとつ詳しく見ていきましょう。

「①個別化の原則」
クライアントはそれぞれ違った問題を抱えている

「個別化の原則」とはクライアントの問題は一人ひとり違うものであり、同じ問題は存在しないとする考え方です。

相談を受けた際、
「前にも同じような問題があった!」
と判断し、その記憶に従って同じような方法で解決しようとしてしまうことがあります。
確かにその方が援助者にとって考える手間が少なく手っ取り早くアクションに移せますよね?

しかし、この世に全く同じ人など存在しません。DNAが同じ双子ですら性格が変わってきます。
また、過去の記憶を参考にすることで
「このクライアントはきっと〇〇な性格だ!」
「きっと小さい時に〇〇だったに違いない!」
と、勝手な偏見や先入観を持つことにも繋がります。

このような理由から「個別化の原則」ではクライアントの問題を他の似たような問題と同類化することは厳禁としています。

「②意図的な感情表現の原則」
クライアントに自由に感情表現してもらう

「意図的な感情表現の原則」とはクライアントの「感情表現の自由」を認めるという考え方です。

「怒り・悲しみ・妬み」などの感情は誰だって外に出したいものではありません。大半の人が心の奥にしまいこんでしまいます。
「意図的な感情表現の原則」では、それらの感情をクライアントから表出させることで援助者との心の壁がなくなり、問題の背景や状況を詳しく知ることが可能とされてます。

また、この原則では援助者があえて自分の感情を出すことでクライアントが
「私も感情を出していいんだ!」
と安心感を与えることも必要としています。

自己開示というものですね。自分を開示することで相手も心の中を開示し、自由な感情表現と繋がっていくことでしょう。

「③統制された情緒関与の原則」
援助者は冷静に対応する

「統制された感情表現の原則」とは援助者自身が感情をコントロールし、常に冷静でいなければいけないということです。

援助者も人間です。クライアントの悩みや感情に共感し過ぎてしまい

「なんてひどい仕打ちを受けたんだ!許せない!」
「こんな悲しい人がいるなんて信じられない!どうにかしてあげなくちゃ!」

と、強い怒りや悲しみを抱いてしまうことがあります。

クライアントとに共感することは確かに大事です。しかしあまりに感情が移入してしまうと思い込みが発生したり判断力が低下します。
結果として本当に必要な援助が見出せなくなることもあります。

目的は問題を解決することです。クライアントに共感するのはそのための手段となります。
このような理由から「統制された感情表現の原則」では自らの感情を統制しながらクライアントと接する必要があるとしています。

「④受容の原則」
クライアントの考えを否定しない

「受容の原則」とはクライアントがどのような考えを持っていたとしても決して否定せず、なぜそのような考え方になったのかを理解していくという考え方です。

人間の価値観とは、その人の環境や過去の経験から形成されます。「普通」や「常識」といった考えは一人ひとり違うものです。

もし、あなたの環境や経験からできた価値観を
「そんなのおかしいでしょ!」
と頭ごなしに否定されたらどう思うでしょう?ほとんどの人は心を閉ざしてしまいます。
よって信頼関係を構築する上でも「受容の原則」は重要となってきます。

しかし、受容とはあくまでも理解することです。クライアントの逸脱した行為を容認することとは違うので注意しましょう。

「⑤非審判的態度の原則」
クライアントの言動をそのまま受け入れる

「非審判的態度の原則」とは援助者がクライアントの言動に対して善悪を判断しないという考え方です。

「受容の原則」でも解説しましたが、クライアントの言動を否定する援助者が信用されることは殆どありません。

そして援助者はあくまでもクイライアンの問題の解決を援助する立場です。行動の善悪についてはクライアント自身が判断することが理想となります。

よって「非審判的態度の原則」では援助者は自分の価値観を押し付けず、あくまでもサポート役に徹しクライアントの問題解決を援助することが重要とされています。

「⑥自己決定の原則」
主人公はクライアントである

「自己決定の法則」とは「あくまでも決定するのはクライアント自身」という考え方です。

援助者が主体となり解決してもクライアントの成長はありません。今後、同じような問題が発生した場合も援助者がいなくては解決することができなくなってしまいます。

全て援助者が決めてしまった方が早いし確実です。しかしその援助者がクライアントと一生一緒にいることは不可能です。

このような理由で「自己決定の原則」では援助者が主体となり、クライアントに対して命令的指示をすることが否定されています。

「⑦秘密保持の原則」
クライアントの個人情報は秘密にする

援助者はクライアントの情報を他者に漏らしてはいけないという考え方です。いわゆる個人情報の保護です。

漏れた情報がきっかけにクライアントに被害がでる可能性もあります。また、クライアントの立場になれば自分の情報を漏らすような援助者を信用できないでしょう。

結果、信頼関係が崩れ、解決が閉ざされてしまう可能性もあります。

まとめ

画像:PhotoAC

今回はバイスティクの7原則について解説しました。この原則はケースワークのために作られたものですが、ケアワーカーとして利用者さんとコミュニケーションをとる際、また友人や家族、仕事仲間と関わる際にも参考になるものがあります。
この記事をきっかけに、自分の対人援助方法を考え直すきっかけになれば幸いです。

より深く「バイスティックの7原則」を理解したいという方は、書籍で学ばれるのをお勧めします。フェリック・バイスティック本人の著書である「ケースワークの原則」は援助関係の分野の古典とも言える名作で、読むのは大変ですがより深く「バイスティックの7原則」を学ぶことができます。

2022年1月31日公開/2022年2月17日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)