すべては利用者さんの笑顔のため!心ひとつで仕事も人生も楽しくなる

「介護ってなかなか報われない」。そう感じている方も多いのではないでしょうか?介護の技術なども年々進歩しているとはいえ、さまざまな状況を抱える利用者さんと向き合うことは大変です。それでも、介護職だからこその魅力や素晴らしさがあるはず!そこで今回、神戸市長田区のグループホーム紅葉さんに伺い、管理者の吉田さん、介護スタッフの谷田さんにお話を聞かせていただきました。

インテリアデザイナーに小売業、大転身で介護の世界へ

ー吉田さんはいつ頃から介護業界に携わっていらっしゃるんですか?

(吉田)介護保険法が始まった頃なので、23、4️年くらいになりますね。もともとインテリアデザイナーだったんです。

ーえー!それはまた大転身ですね!

(吉田)そうなんです。どうして?と思われるでしょう?笑

父が難病にかかってしまって、急に寝たきり生活になってしまったんです。昔気質というか、厳格で体も大きくて、ザ・昭和の父親という感じの人で、看護師さんに面倒をみてもらうなんてとんでもないと。かといって着替えひとつ手伝うにも、(体が大きくて)まあ動かない。どうすればいいのか途方に暮れていたときに「ヘルパー2級」という資格を知りました。

当時は子育て真っ最中でしたし、学費もかかる。正直悩んだのですが、歩行や入浴など介助の仕方を学べるならと受講を決意したんです。

ー思い切りましたね。

(吉田)それはもう。でも、学び始めると感動の連続。あんなに重たかった父の体が、てこの原理で「ふい」っと動くんです!学んだことをひとつ一つ父で試していきました。実験台ですよ笑。「できる」という感動とともに、父の喜ぶ顔がいまでも忘れられません。

父の介護をする中で、何もできない人に対して「やってあげる」のではない、介護は「させていただく」のだということを知りました。

父は他界しましたが、ほんの少しでも介護させてもらえてよかったと思いました。

そんな私を近くで支えてくれていた夫が「お前にはこれが合っているんじゃないか?人のことを自分のお父さんやと思って、やってみたらどうや?」と言ったんです。「ほんまやわ!」って思ったのがこの業界に入ったきっかけです。ヘルパーの資格を取るときも、介護を仕事にと決めたのも、夫の後押しがあったからなんですよ。

ーそんなエピソードがあったんですね。感動です…!谷田さんも別業種から入職されたんですよね。

(谷田)はい。ここに来てちょうど1年になるのですが、それまで25年間小売業に携わってきました。小売業がどうというわけじゃないんですが、働く中で身体を壊してしまい、働き方を見直そうと考えるようになったのが転職のきっかけです。

ーどういったことがしんどかったのか聞かせてもらえますか?

(谷田)当たり前の話ですが、ものを売る仕事は売れて初めて評価されます。極端にいえば、お客様の動機が何であれ売れれば良いわけです。僕もはじめから深く考えていたわけじゃないんですが、販売に携わるうちにお客様の困り事を知り、それに対してどんな解決法を提案できるかを考えることが好きなんだと気づくようになりました。

でも、一人ひとりとのコミュニケーションに時間をかけるより、たくさん売らなければ成績は上がらない。そのあたりのバランスを取るのが難しくなって。上司に強く当たられることも増え、体調を崩して入院することになったんです。入院生活で看護師さんの働き方を見て、「患者さんのことだけを見て仕事している」と感じたことが介護の道に入ったきっかけです。

介護の技術は、利用者さんの「うれしい」のため

ー実際に働き始めてどうでしたか?

(谷田)最初に携わらせてもらったのはお風呂でした。ここで教わったのは「入浴介助という作業」ではなく、利用者さんにお風呂の時間を楽しんでもらうということでした。入浴も着替えもドライヤーも、技術は利用者さんに「気持ちよかった」と思ってもらうためのもの。作業として教わっていたらしんどかったかもしれません。

よく介護の仕事はしんどいと言われるのは、そのあたりの捉えかた一つなんじゃないかなと思うんです。そういったことを吉田さんから教わりました。

ー谷田さんご本人がそれを理解しているからこそ、吉田さんの思いが伝わるんでしょうね。

(吉田)谷田さんはとにかく真面目でまっすぐ。すぅっと筋が通って揺るがない部分があるんですよ。私が伝えることが100%正しいわけではないけれど、ここにこられる利用者さんは私たちよりもずっとご苦労されて来た大大大先輩なんだという思いだけは貫きたいし、彼にはそれがしっかりと理解してもらえていると感じますね。

ーお二人の信頼関係が伝わりますね。充実しているとはいえ長く携わる中で、やりがいを感じなくなったときもあったかと思うのですが。

(吉田)自分の思いを貫こうと思えば思うほど、周りとのギャップに悩むときはありました。私は利用者さん一人一人に対してその人らしい生き方を模索することでその方に必要な介護が見えてくると考えているのですが、周りに「そんなこと考えずに作業としてやれば良い」と言われてしまったり。効率も大事だけど、在り方を無視された気がして虚しくなりました。

ですが、それもバネにして、自分らしい支援をさせていただくようにしてきました。

ー谷田さんはいかがですか?

(谷田)だんだんと作業に慣れてきて、「なんか最近おもしろくないな」と感じた時がありました。介護の仕事に慣れたのではなく作業に慣れてしまっていたんです。利用者さんのことを考えず、利用者さんを動かそうとしていた。楽しくないし、利用者さんも笑ってくれない。

ーどこでそれに気づいたんですか?

(谷田)吉田さんに鼻をへし折られたんです。笑

(吉田)あはは!そうやったね。ほとんどの人がそうなんですが、3ヶ月、半年、1年と様子を見ていると、だいたい半年過ぎた頃に「自分はできるぞ。大丈夫だぞ」の時期が来ると同時にミスが目立つようになってきます。言葉は丁寧でも、支援に愛情が感じられなくなるんです。谷田さんの場合も同じで、このままでは彼の成長が止まってしまう、もしくはまちがった方向に行くと感じたので「このままで良いの?」と。彼は志がある人ので、すぐに気づいてくれました。その後は何か気づきがあるたびに逐一話してくれるようになって。とてもうれしいです。

(谷田)その経験がなければ、続いてなかったかもしれません。

ー深い愛情を感じますね!

(谷田)はい。夜勤の業務を教えてくれた先輩も、「あんた危ないで気をつけや」と声をかけてくれました。吉田さんの思いが浸透している職場やと思います。

ー管理者で雰囲気が変わりますよね。効率のみを重視する事業所は暗いんです。事務員さんが挨拶すらしないとか。こういうところには人の紹介なんてできないなと。そういう意味でもここに谷田さんを紹介させてもらって正解でした!

(吉田)うれしい!

ー介護の仕事は3Kと言われがちですが、逆にこんなメリットあるよ!というところを教えてください。

(吉田)メリットというか、汚い仕事なんて言われるけど、いつかは歩む道だってことを伝えたいです。いまは若くて元気かもしれないけれど、確実に老いはやってくる。老いて身体が弱くなるのは、人生を頑張ってきたからこそなんだとわかってほしい。

お給料も高くはないです。お金はあって困ることはないけど、この仕事にはお金には換えられないものがある。利用者さんと向き合いながら試行錯誤する先に、お給料という報酬があるという順序を理解してほしいな。

面接なんかで「どうしてこの仕事に?」と聞いてみて、根本に「お金が一番」という価値観を持つと感じる人はすぐにやめてしまいます。そもそも3Kだと感じている人は、この仕事に合っていないと思うんです。

(谷田)僕は3Kだと思ったことはないです。周りからたまに言われるけど、「自分はできんだけやろ?」と。嫌ならやらなければいいだけで、働き方や仕事は自分で選べばいいのだと思います。そこがひっかかるなら、お互いにしんどいだけですよね。

僕はいまこの仕事を通してさまざまなことを学んでいます。一人の利用者さんに、何人もの人が関わるんです。どうすれば笑顔が増えるかな?と同僚や先輩と考えて実践するよろこび。こんなのは初めての経験です。

ー天職かもしれないですね。

(谷田)まったくストレスがないとは言えないけど、楽しく向き合わせていただいてます。

妻の見る目も変わりました。失業していた頃、かなり心配も迷惑もかけてきたんですけど、今は羨ましがっています。「私もそう思える仕事を見つけたい」と言ってくれる。ほんとうに、みなさんのおかげです。

ー夜勤も多いし心配してたけど、まさかのろけられるとは。笑

介護にとって大切なのは「心」

ー介護の仕事には向かないなと思うのはどんな人ですか?

(吉田)自分本位というか、支援を作業として捉えてしまう人かな。そして、なんといっても心がない人。人をモノとしてしか見られない人は、福祉に向いていないと思います。

技術を求められるところもあるかもしれませんが、技術は後でついてくるものだと考えています。まったくスキルがなくても、まず大切なのは心があること。利用者さんと真摯に向き合うことができるかどうかが重要です。人生の大先輩に対して、介護させていただくという想いがあれば、技術は働きながらゆっくりと学んでいただければいいと思います。

ーちゃんと人柄を見てくれる職場だということが伝わります。

(吉田)心がなければいい仕事はできません。

ーどんなお仕事でもそうですよね。

(吉田)福祉の世界は人の命を扱うところです。その重みがあるので厳しいことも言います。

結果的にうまくいけばいいのではなく、人の心や痛みを理解しているかを重視したいです。利用者さんが楽しんでいるか、うれしいと感じているか。主体は利用者さんだということだけは忘れないで欲しいです。

一生懸命、誠実、心がきれい。これが大切。谷田さんは満点!ほんと、ここに来てくれてよかった!

「そう言ってもらえたから1年間がんばることができました!」

ーすばらしい!そんなお二人に、これからの目標を聞いてもいいですか。

(谷田)初任者研修に合格することです。技術面だけでなく、包括的な観察力をつけたいし、いつどの利用者さんのことを聞かれても応じられるようになりたいんです。何ができて、何ができていないか、スルーしてしまっていることはないか?そのあたりを客観的に見る力を身につけたいです。

ーこれからの成長がますます楽しみですね!

(吉田)私も資格を取るなどして自分自身を更新していきたいです。介護の仕事はゴールがないし、奥が深いので、まだまだ知りたいことばかりです。

ー日々努力、日々成長ですね。

(吉田)ただ、自分にも周りにも「がんばらなくていい」と言いたい。生きているだけで人はみんながんばっているので、「ぼちぼち行こう」でいいと思うんです。

1日1日大切に生きていきたいですよね。

(谷田)吉田管理者の「おはようございます!」ってすごいんですよ。いつもパワーをもらえるんです。

(吉田)ちょっとうるさいかもしれんけど(笑)。

ー楽しく働いていることが伝わります。また、介護の仕事がいかに大切で、人生の一部であるかを感じました。本日はありがとうございました!

インタビュアー城月のひとこと

今回、インタビューさせてもらって初めて泣きそうになりました!!
吉田さんの介護の仕事に対しての向き合い方や考え方を聞かせてもらい私自身も介護の仕事ってどういう仕事なのか改めて考えることが出来てよかったです。

谷田さんはこんな素敵な上司の元で働けて幸せ!だからこんなに大きく成長したんですね!

お二人ともほんとに輝いていました!


【この記事を書いた人】

宝水さんの画像

宝水幸代

2014年フリーランスのライターとしてデビュー。現在、医療やビジネス系インタビューを中心に、音楽から美容まであらゆる分野に興味を持ち書き分けるマルチジャンル・ライターとして活動中。また各種イベントやコミュニティFM、動画配信番組などのMC、レポーター、モデルとしても活動しており、SNSでは自前の衣装とセルフメイクでさまざまなに変身する「クローゼット・コスプレイヤー」としての発信も。

2023年8月22日公開/2024年4月1日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)