この記事では求職者さん向けに訪問看護ステーションの仕事を紹介しています。
訪問看護は患者さん、利用者さんの自宅に出向いて看護をする仕事です。
「病院やクリニック以外で活躍できる職場を探している」
「訪問看護への転職を考えている」
という人はぜひ参考にしてみてください。
訪問看護ステーションとは利用者さんに訪問看護サービスを提供する施設です。
看護師や保健師、助産師、理学療法士などが所属しています。
訪問看護サービスを提供する施設は
がありますが、この記事では前者の訪問看護ステーションについてご紹介します。
訪問看護に比べ、訪問看護ステーションの方が介護報酬の額が大きくなっており、看護師の給料も高い傾向があるようです。
訪問看護の仕事が増えるのかを知るために、令和3年度介護報酬改定の内容について確認してみましょう。
介護報酬改定では、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する現代において、お年寄りが大幅に増える2025年に向けて、「地域包括ケアシステムの推進」を目指しています。
「地域包括ケアシステムの推進」をわかりやすくまとめると、住み慣れたエリアで利用者さんが必要なサービスを続けて受けられるようにする取り組みです。
具体的な取り組みとして、在宅サービスにも力を入れることになっており、訪問看護や訪問入浴なども充実させるとのことです。
今後は訪問看護に関する仕事も増えていくことでしょう。
参考:令和3年度介護報酬改定の主な事項について(厚生労働省)
訪問看護では、利用者さんの健康状態の管理をします。
などを記録して担当のお医者さんに報告するのです。
また、
なども確認して早い段階で病気を発見できるようにします。
生活指導や健康相談、介護予防相談に応じることもあるのです。
訪問看護では担当のお医者さんの指示のもと、次のような医療処置が行われます。
応急処置などは看護師の判断で行うことができます。
利用者さんが療養しやすい環境をつくることも訪問看護師の仕事です。
などのサポートも行います。
訪問看護には、精神科訪問看護というサポートもあります。心の病気を持っている方の自宅を訪れて、安心な生活を送れるように支援をします。
次のような方への支援を行います。
対人関係の支援や思いの聞き取り、服薬の管理、心の観察なども、訪問看護の仕事に含まれます。
訪問看護の1日のスケジュールを表にまとめてみます。
始業
ミーティング
午前訪問
帰室
昼休憩
午後訪問
帰室
終業
目安として、1日当たりの訪問件数は約5件、働く時間に対する訪問時間は約6割です。スマホで訪問スケジュールを確認できたり、看護記録を行えたりする事業所も見受けられます。
訪問看護の仕事に関するメリットを3つ解説していきます。
訪問介護では目の前の利用者さんに専念してケアを行うことができます。
病院であれば、一人の看護師が複数の患者さんに対応しなくてはいけません。患者さんの血液を検査に回したり、急変する患者さんに対応したり、業務が目まぐるしくなってしまいがちです。
訪問看護であれば、看護師が接する患者さんの数は少なくなるので、一人ひとりの患者さんに時間をかけて接することができます。
利用者さんと家族のように接して、入浴してサッパリできたことや、薬をきちんと服用できたことなど、小さな喜びを共有することもあります。
訪問看護の利用者さんの中には、優しく話を聴いてもらったことや、適切な指導をしてもらったことに感謝する意見も見受けられました。利用者さんから直接的に感謝されやすい点も魅力でしょう。
訪問看護の仕事では、利用者さんの状況に応じて物品を工夫したり、ケアの効率を高めたりする面白さがあります。
看護師が利用者さんのためにお薬カレンダーを手作りで用意するという事例もありました。縦軸に曜日、横軸に朝・昼・夜と設定した段ボールの表を作り、服用する薬を透明なポケットに入れて貼り付ける仕組みです。
仕事が定型化されている病院と違い、自分なりに工夫して仕事をしやすいのも大きな魅力の一つでしょう。
看護師から訪問看護ステーションの管理者にキャリアアップできる可能性もあります。
管理者の役割は、看護職員だけでなく理学療法士といったスタッフをまとめるリーダーです。つまり、看護職員や理学療法士は訪問看護ステーションの管理者から指示を受けます。
管理者は、看護職員や理学療法士などのスタッフが利用者さんに合ったサービスを提供できる環境を整えます。
利用者さんの変化やサービスの質をモニタリングしたり、看護職員が作成した訪問看護計画書を管理したりすることも仕事です。
そのほか、地元の施設と力を合わせたり、スタッフの労務管理も任されたりします。もちろん、利用者さんからのクレームにも対応しなければなりません。
ちなみに、管理者になれるのは看護師あるいは保健師のみです。
また、訪問看護師として雇われる立場では、自分の望む看護ができないこともありえます。その場合、自分で訪問看護ステーションを立ち上げるという方法もあります。
病院を立ち上げるのはとても大変ですが、訪問看護ステーションであれば看護師の資格や経験を生かし立ち上げることもできるのです。
独立希望の看護師を訪問看護ステーションの管理者として施設に紹介するマッチングサービスもあります。管理者や独立を目指す方は、キャリアアップを考えるときに検討してみるとよいでしょう。
訪問看護の仕事に関するデメリット3つ
訪問看護の仕事に関するデメリットを3つ解説します。
訪問看護では訪問先までの移動がやや大変です。
特に天気が悪い日は自転車で訪問することは難しくなります。
職場によっては自動車が必要になることもあり、運転が苦手だと苦労するでしょう。
ナビやバックモニターなどを使える車を用意する職場や、焦って運転しなくて済む移動ルートを設定している職場もあるので、訪問看護の仕事を検討するときは、移動の快適さについても見落とさないようにしましょう。
訪問看護では1人で看護に向かうのが基本です。
わからないことがあったときに、先輩の看護師に相談する機会は多くありません。特に、これまで経験していない疾患の利用者さんを担当するときは、対処に困るでしょう。
利用者さんに異変があったとき、病院のように担当のお医者さんが駆け寄ってくることもありません。担当のお医者さんに電話をかけて指示を仰ぎ、見落としを防ぐためにあらゆることに気を配る必要があります。
人的なサポートを受けづらい点だけでなく、病院の設備を利用できない点もデメリットです。
訪問看護師は、利用者さんが大変なときに対応できるよう、携帯電話を持たされるケースが多い傾向です。病院や施設の営業時間外であっても、利用者さんの体調が悪くなったときは、すぐに駆け付けなければなりません。
オンコール当番の看護師は、呼び出される緊張感を抱きながら生活することになり、休日があっても気持ちが休みづらくなります。
そのため、緊急携帯を持たなくてよい訪問看護ステーションを探す方もいます。
訪問看護のデメリットを知って、きつい仕事だというイメージを持った方もいたかもしれません。実際に訪問看護師になった方は、訪問看護の仕事について、どう思っているのでしょうか。
転職支援サービスを運営する企業の調査(2018年実施)によると、「訪問看護師になって良かったと思うか?」という質問に対しての回答結果は、「とてもそう思う」「そう思う」という回答が合わせて47.8%でした。
半数近くの訪問看護師が、訪問看護の仕事に対してポジティブな考えを示しているとわかります。
「訪問看護の仕事でスキルや経験不足で困ったことはあるか」という質問に対しての回答結果は、「ある」が72.5%でした。体調が悪くなったときのタイミングや、病院とは違う衛生環境、人工呼吸器の取り扱いなどが困った内容として挙げられています。
「ひと月に何回のオンコールを受けるか」という質問に対しての回答結果は、「0回」が46.5%でした。オンコールを受けない月もあるとわかりました。
訪問看護の仕事が向いてる人を解説していきます。
病院では、患者さんの在院日数が短い傾向があるため、患者さんの入れ替わりが発生しやすいです。そのため、患者さんが治っていく様子を実感しづらい実情があります。
退院を迎える患者さんに、退院後の過ごし方や不安を聞くことすら難しいときもあるようです。
その点訪問看護は、利用者さんとじっくりコミュニケーションを交わしやすい環境で仕事を行えます。ときには利用者さんから人生の体験をうかがえる機会もあります。
訪問看護は、利用者さんの気持ちに寄り添った看護を希望する方に適しているといえるでしょう。
訪問看護は日勤がメインの働き方であり、夜勤がありません。病院で働く看護師のように生活リズムを乱しづらいので、規則正しい生活を送りたい方に適しています。
基本的には定時で帰宅できるほか、緊急担当時以外は土日も休める職場もあるので、家族との時間も確保しやすいです。
訪問看護の仕事には週1日から働けるシフト自由の職場も見受けられます。働く時間や働く日数の相談もでき、子どもの学校行事に際してお休みを取得しやすい職場もありました。
訪問看護師が多く在籍している職場であれば、スケジュールを変更してもらえるケースもあります。親の介護が必要なときに、介護休暇をもらえる職場もあります。子育てや介護をしている方でも働きやすいでしょう。
このように訪問看護の仕事は働きやすい可能性があり、ワークライフバランスをもとめる方にもピッタリだといえます。
訪問看護に関する気になる疑問にお答えしていきます。
訪問看護は訪問看護師が医師の指導にもとづいて行う看護です。一方で在宅看護は、かかりつけ医と相談しつつ家族が自宅でケアをする看護です。
訪問看護と間違いやすいのが訪問介護です。
訪問看護は訪問看護師が提供するサービスであり、訪問介護と違って医療的な行為も求められます。療養に関するサポートをする役割は、いずれも共通です。
訪問看護師も簡単なリハビリを担当のお医者さんから任されることもあります。まず、運動機能を良くしていくリハビリです。体の関節を動かしたり、筋力トレーニングを行ったりします。
また、日常生活の動きをトレーニングすることもあります。たとえば、歩行や食事、入浴などに必要な動きです。
そのほか、訪問中にリハビリするだけでなく、自主トレーニングのメニューを考えることもあります。
訪問看護では、ナース服を着用しません。訪問看護ステーションで貸し出される制服や、自分の私服で仕事に臨みます。
持ち物は主に、利用者さんに対する観察・検査・処置に関する道具です。具体的な持ち物の例は下記の通りです。
・聴診器
・体温計
・血圧計
・採血セット
・口腔ケアスポンジ
・爪切りセット
・点滴セット
・消毒液
・絆創膏
・包帯
・ピンセット
・マスク
そのほか、筆記用具やスリッパ、スマートフォンなども持って行きます。各自で必要な道具を足したり引いたりするのが一般的です。
訪問看護は、担当のお医者さんが患者さんに対して、訪問看護が必要だと思った場合にスタートします。そのときにお医者さんは、患者さんの選んだ訪問看護ステーションに訪問看護指示書を送ります。
つまり、訪問看護の必要性は訪問看護ステーションが決めるわけではないということです。病院が訪問看護ステーションに訪問看護をお願いします。
看護職員は、お医者さんが送ってきた訪問看護指示書にもとづいて看護しますが、訪問看護計画も作成します。利用者さんの病気や生活について考えながら、訪問時に重要な内容を書いていくのが基本です。リハビリに関する内容は理学療法士が作成します。
作成した訪問看護計画は、ケアマネージャー(介護支援専門員)にも伝えてケアプラン(介護サービス計画書)にまで反映してもらいます。
訪問看護では、訪問看護施設の管理者の人が、いわゆる上司ということになります。
訪問看護計画に従って業務を進め、管理者の人に報告をするのです。
利用者さんの生活面や健康面の変化があれば、報告を受けた管理者の人がケアマネージャーやお医者さんと連携し訪問看護計画を作り直します。
看護職員は作成された訪問看護計画の内容をもとに業務をおこなうのです。
以上、訪問看護の仕事内容やスケジュールをはじめ、気になる疑問点について解説をしました。
訪問看護のメリットやデメリットを含めた実情を知ることで、客観的に仕事のやりがいを把握できたのではないでしょうか。
自分の性格に向いている、あるいは、自分に適性があると感じた方は、訪問看護の求人を一度確認してみることをおすすめします。
施設によっては、訪問看護の体験を受け付けている場合もあります。施設に出向き、訪問看護に関する話を聞いたり、訪問看護に同行したりすれば、実務のイメージが湧くに違いありません。
2021年6月1日公開/2024年4月1日更新(ひょうご介護アナウンス編集部)